ペアローンは夫婦が共同で住宅ローンを組む際に多く利用される手段ですが、離婚やその他の理由でペアローンを解消する場合、贈与税や譲渡所得税について税務上の問題が生じることがあります。
本記事では、ペアローン解消時に発生し得る課税関係について具体的なケースを通じて解説し、税負担を最小限に抑えるためのポイントや留意点を詳しく紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ペアローンとは?
ペアローンとは、主に夫婦や親子、兄弟などの親族間でそれぞれが契約者となって借入れを行う住宅ローンの一種です。このローンは、二人以上の共同借入者が連帯して借入れを行い、返済責任を共有することが特徴です。ペアローンは、単独での借入れが難しい場合や、より高額な住宅購入を希望する際に利用されます。
住宅ローンのペアローンとは?メリット・デメリットを徹底解説 | Money Journey (moneyforward.com)
ペアローン解消の理由
ペアローンを解消する理由には、以下のようなものがあります。
- 離婚
- 住宅の売却
- ローンの一本化
今回お話をいただいたのは、ローンの一本化をしたいとのご相談でしたので、共有者間でのローンの一本化を前提にお話を進めさせていただきます。。
ペアローン解消時の課税関係
1 贈与税
ペアローンを解消する際に注意すべき税金の一つが贈与税です。例えば、夫が妻のローン残高を肩代わりする場合、肩代わりした金額が贈与と見なされ、贈与税の対象となります。
具体例
前提条件として、不動産価額1億円、借入金額1億円、共有持分50%を想定します。
① 不動産持分変更しない場合
★肩代わりする側
∴ 課税関係はありません。
★肩代わりされる側
変更前 | 変更後 | |
不動産 | 50,000,000円 | 50,000,000円 |
借入金額 | 50,000,000円 | 0円 |
損益 | 0円 | 50,000,000円 |
∴ 損益にプラスが生じているため、贈与税が生じます
②不動産持分を変更し、かつ不動産評価額>借入金額の場合
不動産の持分を変更をし、贈与時の不動産評価額が借入金額を上回っている場合です。
例えば前提条件の不動産価額を2億円に変更してみます。
★肩代わりする側
変更前 | 変更後 | |
不動産 | 100,000,000円 | 200,000,000円 |
借入金額 | 50,000,000円 | 100,000,000円 |
損益 | 50,000,000円 | 100,000,000円 |
∴ 利益が増加したため、贈与税が生じます
★肩代わりされる側
∴ 課税関係はありません
2 譲渡所得税
ペアローンを解消する際に、譲渡所得税が発生する可能性があります。
譲渡所得税は、住宅の売却によって得られた利益に対して課される税金です。
つまり、パートナーに対して不動産を売却したとみなされて譲渡所得税が課税されることがあります。
①不動産持分を変更し、かつ不動産評価額<借入金額の場合
不動産の持分を変更をし、贈与時の不動産評価額が借入金額を下回っている場合です。
例えば前提条件の不動産価額を5,000万円に変更してみます。
★肩代わりする側
∴ 課税関係は生じません。
★肩代わりされる側
∴ 25,000,000円の不動産を50,000,000円で売却したと考える必要があるため、贈与税は生じませんが、譲渡所得税が生じます。
概要
負担付贈与とは、受贈者に一定の債務を負担させることを条件にした財産の贈与をいいます。
個人から負担付贈与を受けた場合は、贈与財産の価額から負担額を控除した価額に贈与税が課税されることになります。
課税価格
この場合の課税価格は、贈与された財産が土地や借地権などである場合および家屋や構築物などである場合には、その贈与の時における通常の取引価額に相当する金額から負担額を控除した価額によることになっています。
また、贈与された財産が上記の財産以外のものである場合は、その財産の相続税評価額から負担額を控除した価額となります。
なお、負担付贈与があった場合においてその負担額が第三者の利益に帰すときは、その第三者は負担額に相当する金額を贈与により取得したことになります。
贈与者は、負担額でその贈与財産を譲渡したことになりますので、譲渡益が生じる場合には、所得税の対象となります。
No.4426 負担付贈与に対する課税|国税庁 (nta.go.jp)
留意点
★夫婦間で居住用不動産を贈与した場合の配偶者控除
国税庁の特例により、婚姻期間20年以上の配偶者間での居住用不動産の贈与には2,000万円(+110万円)の配偶者控除が適用されます。この特例を利用することで、贈与税について税負担を軽減することができます。
概要
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。
特例の適用を受けるための要件
(1) 夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと。
(2) 配偶者から贈与された財産が、 居住用不動産であることまたは居住用不動産を取得するための金銭であること。
(3) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること。
(注1) 「居住用不動産」とは、専ら居住の用に供する土地もしくは土地の上に存する権利または家屋で国内にあるものをいいます。
(注2) 配偶者控除は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。
No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除|国税庁 (nta.go.jp)
★負担付き贈与
負担付贈与とは、贈与と同時に債務も引き受けることを指します。この場合、不動産について時価評価が必要となり、贈与税の課税対象となるため、慎重な対応が求められます。
時価評価を行うことになると場合によっては、他の士業を力を借りる必要があります。
概要
負担付贈与とは、受贈者に一定の債務を負担させることを条件にした財産の贈与をいいます。
個人から負担付贈与を受けた場合は、贈与財産の価額から負担額を控除した価額に贈与税が課税されることになります。
課税価格
この場合の課税価格は、贈与された財産が土地や借地権などである場合および家屋や構築物などである場合には、その贈与の時における通常の取引価額に相当する金額から負担額を控除した価額によることになっています。
また、贈与された財産が上記の財産以外のものである場合は、その財産の相続税評価額から負担額を控除した価額となります。
なお、負担付贈与があった場合においてその負担額が第三者の利益に帰すときは、その第三者は負担額に相当する金額を贈与により取得したことになります。
贈与者は、負担額でその贈与財産を譲渡したことになりますので、譲渡益が生じる場合には、所得税の対象となります。
No.4426 負担付贈与に対する課税|国税庁 (nta.go.jp)
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